１，さらば奈良県の人々よ、また会う日まで

　奈良県から琵琶湖に通う日々を続けていた俺にも、２県目の４年間が過ぎ、ふたたび転勤の時期がやってきた。

　奈良県から去るのは、名残り惜しかった。

　苦しかった転勤したての頃。
　山を越えて琵琶湖へ通った日々。

　よそ者の俺に対して、親しく交流してくれた職場やフィットネスジムの人々。

　職場があんなに楽しかったのは、仕事というものをやりだしてから初めてのことである。

　これは、奈良県の土地柄によるものだろう。

　奈良県は、ひょっとすると、ここに住みついてもいいかな、と思うくらいのところだった。

　しかし、転勤は、俺の職種の宿命である。
　
　俺は、いろいろ悩んだあげく、滋賀県に行くことにした。

　そう、本当の意味で、琵琶湖ローカルになったのである。

　そして、新たなるゲレンデを開拓したいという思いが、俺の中で頭をもたげだした。

　

２，新海浜への挑戦

　近江八幡の牧からしばらく北へ行った地点に、彦根市の新海浜というゲレンデがあった。

　弓形の砂浜が長く続き、琵琶湖レギュラーの北西風では、クロスオン。

　風が吹けば、腰から最大胸までの波が立ち、台風直撃の時などは、関西中のウインドサーファーが集まってくる。

　「湖でウェイブ」という、常識では考えられない場所である。

　俺は、新海浜でも乗るようになり、松林に打ち上げられては、

　道具を抱えて、テクテクと歩き、

　元いた場所へ戻っては、また、出艇した。

　そして、次第に、ウエイブライディングに興味を持つようになっていった。