１，関西の湘南　須磨海岸

　俺の通ったスクールは、神戸の須磨海岸にあった。

　海岸の長さは約１．８キロで、幅１５０メートルの砂浜が続いている。

　夏には約百万人の海水浴客が訪れる、西日本随一の一大ナンパスポットである。

　須磨海岸自体は、風はあまり吹かない。





　俺は、今でも、初めてスクールに行った日のことを鮮明に覚えている。

　午前９時頃、ＪＲ須磨駅の階段を下りてビーチを歩き、ショップへ行くと、まだシャッターが閉まっていて、数人の男女がしゃがんで座り、話をしていた。

　話の内容は、とりとめのないことで、みんな、スクールに来た連中だった。

　俺達は、性別、年齢、職業関係なく、なごやかに語り合い、そして、予定時刻の午前１０時を５分だけオーバーして、シャッターが開き、シーガルを渡されて、着替えた。

　インストラクターからウインドサーフィンの道具のセッティングと、これからの練習内容の説明を受ける。

　その後、海へボードを浮かべてセイルアップをした。

　終わると、店長から、できれば同じメンツで２回目のスクールをやりたいと言われ、日を決めて、俺達は別れた。

　「次のスクールで！！」

　って。





　

2，やりたいことがある幸せ(＾＾)

　 このようにして、俺は、なんとかボードに立てるようになり、前に進んで戻ってこれるようになり、やがて海上を突っ走れるようになった。

　そして、俺は、須磨の雰囲気が気に入って、そのショップの艇庫会員となった。

　休日が来ると、電車に乗って須磨へ行き、ショップの艇庫からボードとリグ一式を引っ張り出して、風があろうとなかろうと海に出た。



　須磨海岸のビーチは、防波堤で囲まれていて、超初心者はインサイド、ある程度乗れるようになると、防波堤の外へ出るようになる。

　俺は、程よい風が吹いたある日、びびりながら、防波堤の外に初めて出てみた。

　外に出て、ぐーっとレグを伸ばしはじめた時、俺の心の何かがぷつっと切れた。

　そして、俺は、開放感に包まれながら、誰にも縛られずに、海原を行きたい方向に走った。

　俺は、心の中で、叫んだ。

　







　これって、いいよ。ほんとにいい。最高だ！！



　生まれて初めて、生きがいというものを、俺は見つけたのだった。(^^)